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相場が急に動くとスプレッドが広がるのはなぜ?スリッページとの違いも解説

|お金の学び場 編集部
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3行でわかる

  • 急な場面では、FX会社が値段の元にする銀行などの値幅が広がり、会社のスプレッドも広がります。
  • スリッページは注文時と約定時の値段のずれ。スプレッドの拡大とは別の現象です。
  • みんなのFXの米ドル/円は、広告0.2銭に対し、4週間の最大が14.0銭でした。
2枚の値札のすき間が大きく開き、その横で注文の矢印が少しずれた位置に着地しているイラスト

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手数料0円でも、スプレッドは「値段の差」

先に、スプレッドが何かを確かめておきます。FXの画面には、同じ通貨ペアに「売る値段(売値)」と「買う値段(買値)」の2つが並んでいて、その差がスプレッドです。取引手数料が0円の口座でも、取引はいつもこの差の分だけ不利な値段から始まります。

国内の多くのFXでは、お客の取引相手はFX会社自身です。会社はお客と同じ取引を銀行などとも行い(カバー取引)、銀行などから受け取る値段をもとに、少し差をつけた値段をお客に出しています。ヒロセ通商は有価証券報告書で、銀行などの金融機関20社以上と取引し、その中で最良の値段を選んでお客に出していると書いています。

つまり、お客が見ている値段は、会社がゼロから決めた値段ではなく、元になる銀行などの値段の上に乗っているものです。ここが、急な場面でスプレッドが広がる理由の出発点になります。

もっと詳しくスプレッドとは?FXの取引コストを各社の公表値で計算

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元になる値段の幅が広がると、FX会社のスプレッドも広がる

FX会社のスプレッドが広がるのは、多くの場合、元になる銀行どうしの値段の幅そのものが広がるときです。外為どっとコムは、2026年2月の米雇用統計の発表前に、次のように告知しています。

実勢インターバンクレートのスプレッド(BidとAskの差)が平常時に比べ著しく拡大した場合には、当社でもやむなくスプレッドを拡大する可能性がございます

インターバンクレートは、銀行どうしの取引の値段のことです。元の値段の売値と買値の差が大きく開けば、その上に乗っている会社の値段も、狭いままでは出せなくなります。

では、なぜ銀行どうしの値段の幅が広がるのか。値段を出す側にとって、重要な発表の瞬間は「次の値段がどちらに飛ぶか分からない」時間です。そこで狭い幅のまま値段を出し続けると、発表の中身を先に読んだ相手に、不利な値段で取引されるおそれがあります。

英国の金融行為監督機構(FCA)が2023年1月に出した研究は、2012〜2015年の銀行どうしの取引の場のデータで、このことを確かめています。英ポンド/米ドルでは、予定された経済指標の発表の直前1分間に、高頻度取引業者(コンピューターで高速に売買する業者)が出す値段の幅は30%超、ディーラー銀行が出す値段の幅は約10%広がりました。高頻度取引業者の値幅は、発表のあとすぐに戻っています。研究は、値段を出す側の中心的な課題として「より多くの情報を持つ相手と取引して損をする」のを避けることを挙げ、発表前の値幅の動きをこの観点から分析しています。

値段を出す相手が減ることもあります。外為どっとコムは同じ告知で、著しく流動性が下がってインターバンクレートの参照が難しくなった場合には、取引レートの更新や注文の受付を止める可能性があるとしています。流動性とは、売りたい人・買いたい人がどれだけいて、取引がどれだけ成立しやすいか、のことです。複数の銀行の値段から最良のものを選んでいる会社では、値段を出す銀行が減れば、その中の最良の値段も広くなります。

図1 元になる銀行などの値段の幅が広がると、FX会社がお客に出す値段の幅も広がる(イラスト)
図1 元になる銀行などの値段の幅が広がると、FX会社がお客に出す値段の幅も広がる(イラスト)

スプレッドが広がりやすい場面

FX会社は、広がりやすい場面を公式サイトで説明しています。FXTF(ゴールデンウェイ・ジャパン)の注意事項は、次の3つを挙げています。

  • 市場の急変時:震災などの天変地異、各国の中央銀行による市場介入、そのほかの外部の要因
  • 市場の流動性が下がっているとき:国内外の金融市場の休日、平日の早朝、クリスマスの時期、年末年始など
  • 経済指標の発表前後の時間帯

みんなのFXも「原則固定 例外あり」の例外として、重要な経済指標の発表時や、休日明けの取引開始時を挙げています。週明けについては、同社の公表資料に、月曜の取引開始時に値段の配信がなかった時間(2.410秒)が記録されています。理由は「マーケットオープン時にオープンレート取得までレート配信がなかったため」です。

中央銀行の発表も、元の値段を大きく動かします。松井証券は2022年4月、インターバンク市場のスプレッドが広がる中で日銀が国債の指値オペの実施を公表したことを理由に、米ドル/円を「原則固定スプレッド」から「変動スプレッド」に切り替えました。元の値段の幅が広がり続けると、会社は広告の出し方そのものを変えることもあります。

金融先物取引業協会は、こうした例外を2つに分けて考えています。

  • 突然起きて、いつ起きるか分からないもの:震災などの天変地異や、リーマン・ショックのような出来事
  • 決まった条件で毎回起きるので、前もって分かるもの:営業時間の終わり際などに、銀行どうしの取引の流動性が下がること

2つめは時間帯で分かるので、多くの会社は「狭いスプレッドを出す時間帯」を最初から決めています。みんなのFXの米ドル/円は、午前8時〜翌日午前5時が0.2銭、それ以外の早朝の取引時間(午前5時〜8時のうち取引できる時間)は3.9銭です。

「原則固定」の例外は、どれくらいあるのか

「原則固定」という言葉には、業界の決まりがあります。FXTFの注意事項は、「原則固定(例外あり)」を、広告に出したスプレッドを取引できる時間の95%以上で出している状態、と定義しています。金融先物取引業協会も、例外で広告どおりのスプレッドを出せない時間は、お客が取引できる時間の5%以内であるべきだ、という考え方を示しています。

そのうえで、協会の考え方では、各社はスプレッドを広告どおりに出せた時間の割合(スプレッド提示率)を週ごとに公表することになっています。実際に各社は、提示率、スプレッドの最大値、値段の配信が止まった時間、広告と違った理由を公表しています。

みんなのFXの米ドル/円の実績(2026年10月29日公表・対象期間2026年9月28日〜10月23日の約4週間)を見てみます。広告で0.2銭としている午前8時〜翌日午前5時の時間帯について、次のとおりです。

  • 0.2銭以下で出せた時間(提示率):98.74%
  • 最も広かったとき(最大値):14.0銭
  • 広告と違った理由:「経済指標発表に伴う相場急変の影響によるもの」「市場の流動性低下によるもの」

0.2銭より広かった時間は1.26%(当サイト計算)で、95%の基準の範囲です。一方、最も広かったときの14.0銭は、広告の0.2銭の70倍です。1万通貨なら、0.2銭は20円、14.0銭は1,400円です(当サイト計算)。最大値がいつ、どの発表で出たかの内訳は、この資料には書かれていません。

図2 みんなのFXの米ドル/円の公表実績。0.2銭以下で出せた時間は98.74%、最も広かったときは14.0銭(2026年9月28日〜10月23日)
図2 みんなのFXの米ドル/円の公表実績。0.2銭以下で出せた時間は98.74%、最も広かったときは14.0銭(2026年9月28日〜10月23日)

ふだんの時間の98%以上は広告どおりでも、残りのわずかな時間に、ふだんの何十倍にも広がることがある。急な場面でスプレッドが「急に高くなる」と感じるのは、この残りの時間に取引しているからです。各社の実績は公式サイトで読めるので、会社が広告どおりに値段を出しているかは、お客の側から確かめられます。

スリッページは「注文した値段」と「決まった値段」のずれ

ここからは、同じ場面で起きやすい、もう1つの現象です。スリッページとは、注文を出したときの値段と、実際に取引が成立(約定)した値段のずれのことです。外為どっとコムは、注文を出してから、その注文がFX会社のサーバーに届いて約定するまでの間に、値段が変わってしまった場合に起きると説明しています。

金融庁の監督指針も、スリッページは注文の伝達にかかる時間の経過などにともなって「必然的に発生するもの」としています。値段が速く動く場面ほど、届くまでのわずかな時間に値段が先へ進むので、ずれは大きくなります。

ずれる向きは、不利とは限りません。セントラル短資FXの取引要綱は、スリッページは「お客さまに有利になる場合もあれば、不利になる場合もあります」と書いています。監督指針は、FX会社がお客に不利なときだけずれを反映し、有利なときは反映しない、といった非対称な扱いをしていないかを監督の着眼点にしており、スリッページが起きることやその原因を、お客に前もって説明しているかも確かめるとしています。

ずれの金額は、数量に比例します。たとえば米ドル/円で3銭(0.03円)不利にずれると、1,000通貨で30円、1万通貨で300円です(計算例)。

スプレッドの拡大とスリッページは別の現象

この2つは、よく一緒に語られますが、起きていることが違います。

スプレッドの拡大 スリッページ
何が起きるか 同じ瞬間の「売る値段」と「買う値段」の差が広がる 注文したときの値段と、成立した値段がずれる
見えるタイミング 注文する前から、画面の2つの値段の差で見える 注文したあと、約定の結果で分かる
向き 広がった分だけ、お客にとって不利 有利にも不利にもなりうる
主な原因 元になる銀行などの値段の幅が広がる・値段を出す相手が減る 注文が届くまでの間に値段が動く
起きやすい場面 指標発表の前後・早朝・週明け・年末年始など 値段が速く動くとき(指標発表の直後など)

「スリッページのせいでスプレッドが開く」のではなく、相場が急に動くという同じ原因から、2つが同時に起きやすい、という関係です。スプレッドが広がっているときに成行で注文すると、広いスプレッドとスリッページの両方を受けることになります。

図3 スプレッドの拡大は同じ瞬間の売値と買値の差、スリッページは注文時と約定時の値段のずれ(イラスト)
図3 スプレッドの拡大は同じ瞬間の売値と買値の差、スリッページは注文時と約定時の値段のずれ(イラスト)

逆指値は、値段が飛ぶと先のほうで決まる

注文の種類によって、スリッページの起き方が違います。

  • 成行注文:その時の値段ですぐに取引するので、スリッページが起きることがある。FXTFは「価格よりも約定を優先させる注文方法」と説明しています
  • 指値注文:今より有利な値段を指定して待つ注文。FXTFは「必ず指定したレートで約定します」、外為どっとコムは「指値注文では、基本的にスリッページは発生しません」と説明しています。ただし、その値段に届かなければ成立しません
  • 逆指値注文:今より不利な値段を指定する注文で、損切りに使われます。外為どっとコムは「ストップ注文(逆指値注文)では、実勢レートが指定レートに到達してから注文が執行されるため、スリッページが発生することがあります」と書いています

逆指値は、指定した値段に届いた時点で成行の注文として出されます。発表の瞬間に値段が逆指値を飛び越えて動くと、指定した値段より不利な、飛んだ先の値段で決まることがあります。損切りの金額が計算より大きくなるのは、このためです。

もっと詳しく逆指値注文とは?損切りを自動で置く使い方と、値段がずれる理由

急な場面の前に、読者ができること

スプレッドの拡大もスリッページも、FX会社のふだんの仕組みの中で起きるものです。避けられない場面はありますが、受ける影響は小さくできます。

1. 発表の時刻を先に確かめる

経済指標の発表日時は、前もって決まっています。当サイトの経済指標カレンダーで、取引する日の発表時刻と重要度を確かめ、その前後を「スプレッドが広がりやすい時間」として扱います。

もっと詳しく経済指標カレンダー

2. 発表の直前直後に、成行で新しく取引を始めない

成行注文は約定を優先するので、広がったスプレッドとスリッページの両方を受けます。発表の直前直後を避けて、値段が落ち着いてから注文すれば、両方の影響を受けにくくなります。

3. 成行注文には、許容するずれの幅を設定しておく

成行注文で受け入れるずれの幅を、前もって決めておける会社があります。呼び方は会社ごとに違い、外為どっとコムは「許容スリッページ」、みんなのFXはアプリの成行注文の「スリッページ」設定(LIGHTペア以外は0〜999Pips)、セントラル短資FXは「スリッページ限度幅」です。外為どっとコムの例では、1ドル=100円で許容スリッページを50pips(同社の数え方で0.05円)にして買い注文を出すと、100.05円を超える値段では注文が成立しません。

その代わり、幅を小さくするほど、急な場面では注文が成立しにくくなります。みんなのFXの説明では、設定値が0のときに注文価格と約定価格に差が出ると、成行注文は成立しません。反対に「無制限」にすると、注文価格から大きく離れた値段で約定するおそれがあります。

4. 値段を決めて取引したいなら、指値を使う

決めた値段で取引したいときは指値注文を使います。外為どっとコムの説明のとおり指値では基本的にスリッページは起きませんが、その値段まで来なければ成立しない、という性質の違いを分かったうえで選びます。

もっと詳しく成行注文と指値注文の違い|すぐに取引するか、値段を決めて待つか

5. 発表をまたいでポジションを持つなら、証拠金に余裕を残す

スプレッドが広がると、決済しなくても、持っているポジションの評価が悪くなります。外為どっとコムは、スプレッドが広がると評価レートの変動で口座の有効比率(証拠金の余裕を示す割合)が下がり、ロスカットの水準を下回るおそれがあると告知しています。発表をまたいで持つときは、証拠金に余裕を残しておくと、一時的な広がりで強制決済されることを防ぎやすくなります。

もっと詳しくロスカットとは?発動する水準と、何円動くと決済されるかを計算

損切りの逆指値をどこに置くか、計算と実際の差をどう見込むかは、こちらで計算例とあわせて説明しています。

もっと詳しく指値と損切りの置き方|何pips取るかの決め方と、損切りが遠いときのロット計算

口座を選ぶときは、公表実績も見る

スプレッドを比べるときは、広告の最小の数字だけでなく、各社が公表している提示率と最大値もあわせて見ると、急な場面での広がり方まで分かります。狭いスプレッドを出す時間帯が、自分が取引する時間に合っているかも確かめます。比較ページでは、各社の米ドル/円のスプレッドと適用される時間帯を並べています。

もっと詳しくFX口座比較ランキング(評価方法を公開)

PRFX口座 比較(スプレッドは通常の米ドル/円)
順位口座スプレッド最小単位
1JFX0.2銭1,000通貨公式
2みんなのFX0.2銭※1,000通貨公式
3ヒロセ通商0.2銭1,000通貨公式

2026年11月2日時点・各社公表値(会社ごとの基準日は会社別ページ)。※は注記あり(LIGHTペア・手数料など。比較ページの注記)。順位は公開している配点で採点。全社の比較を見る

よくある質問

QFX会社が、わざとスプレッドを広げているのではないですか?
A外為どっとコムは、銀行どうしの取引の値段(インターバンクレート)の売値と買値の差が平常時より著しく広がった場合に、自社のスプレッドも広げることがあると告知しています。また、FX会社が加盟する金融先物取引業協会は、「原則固定」と広告できるのは、例外で広がる時間が取引できる時間の5%以内の場合だという考え方を示しており、各社はスプレッドを広告どおりに出せた時間の割合や最大値、理由を公表しています。気になる会社の実績は、公式サイトの公表資料で確かめられます。
Qスリッページは、いつも自分に不利な方向に起きるのですか?
A有利な方向にも不利な方向にも起きます。セントラル短資FXの取引要綱は、スリッページは「お客さまに有利になる場合もあれば、不利になる場合もあります」と書いています。金融庁の監督指針も、不利なときだけずれを反映し、有利なときは反映しないといった、お客に不利な非対称な扱いをしていないかを監督の着眼点にしています。
Q許容スリッページを0にしておけば、値段のずれはなくなりますか?
Aずれた値段で成立することはなくなりますが、その代わり注文が成立しないことがあります。みんなのFXのアプリの説明では、スリッページの設定値が0のとき、注文価格と約定価格に差が出ると成行注文が成立せず、「成立しませんでした」と表示されます。急な場面ほど成立しにくくなります。
Q経済指標の発表時刻は、どこで確かめられますか?
A当サイトの経済指標カレンダーで、発表の日時と重要度を一覧にしています。米雇用統計や米国の消費者物価指数(CPI)のように、為替が大きく動きやすい指標の前後は、スプレッドの拡大とスリッページの両方が起きやすい時間です。

出典

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この記事を書いた人

お金の学び場 編集部

エムシージェイ株式会社が運営する「お金の学び場」の編集部。統計の発表元・各社の公式サイトなど一次情報から数字を取り、出典と確認日を記事に書く方針で編集しています。

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