ドル円はなぜ150円・145円のような「きりのいい数字」が意識されるのか|注文・オプション・為替予約と仲値から整理
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3行でわかる
- きりのいい数字が意識されるのは、指値や損切りの注文がそこに集まるからです。
- 企業の為替予約と仲値・五十日は「どこで」より「いつ・どちら向きに」動くかに関わります。
- 当サイトの集計では、東京時間の高値・安値は00銭・50銭ちょうどに特に多くはありませんでした。

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先に結論:「どこで」と「いつ」は別の話
150円や145円のような数字が意識される理由は、大きく分けて2種類あります。
- どこで止まりやすいか:指値や損切りの注文が、きりのいい数字の上や手前に集まる。通貨オプションの行使価格やバリア(決められた値段に触れると権利が消える条件)も、きりのいい数字に置かれることが多い
- いつ、どちら向きに動きやすいか:企業が銀行と結ぶ為替予約や、仲値(9時55分)・五十日のように、決まった日時に決まった向きの注文が出やすい
企業の為替予約は「いつ動くか」に、きりのいい数字は「どこで止まるか」に関わる、と分けて考えると整理しやすくなります。以下、順に見ていきます。
注文がきりのいい数字に集まる
いちばん直接の理由は、注文そのものがきりのいい数字に集まることです。これを実際の注文で確かめたのが、ニューヨーク連邦準備銀行のキャロル・オスラー(Carol Osler)の研究です。
オスラーは、ある大手銀行が1999年9月1日〜2000年4月11日に受けた、利益確定と損切りの注文9,667件を調べました(うち43%がドル円)。注文の値段の下2桁がばらばらなら、どの数字も約1%ずつになるはずです。実際は次のように偏っていました(ニューヨーク連銀 Staff Report 125・2001年)。
- 最も多いのは「00」で終わる値(ドル円なら123.00円のような値)。注文の平均約8.7%がここに集まっていた
- 次に多いのが「50」、その次が00・50以外の「0」で終わる値、その次が「5」で終わる値。25や75には特に集まっていなかった
- 利益確定の注文は、ちょうどの数字に置かれやすい。 00ちょうどに置かれた割合は、利益確定の9.3%に対し、損切りは4.4%だった
- 損切りの注文は、きりのいい数字の少し先に置かれやすい。 損切りの買いはきりのいい数字のすぐ上に、損切りの売りはすぐ下に集まっていた
この偏りから、オスラーは2つの経験則を説明しています。ドル円が150円に向かって上がってくると、150.00円ちょうどには利益確定の売りが待っているので、そこで止まりやすい。一方、150円を上に抜けると、すぐ上に置かれた損切りの買いが次々に成立(約定)し、上がる勢いがつきやすい。「節目で止まる」と「節目を抜けると走る」は、同じ数字のまわりで起きる別々の注文の働きです。

利益確定の指値と損切りの逆指値をどこに置くかは、別の記事で詳しく書いています。
もっと詳しく指値と損切りの置き方|何pips取るかの決め方と、損切りが遠いときのロット計算
通貨オプションの行使価格とバリア
銀行や企業、投資家は、通貨オプション(決めた値段でドルを売買する権利)も取引しています。オプションの行使価格や、バリア(その値段に触れると権利が消えたり生まれたりする条件)も、きりのいい数字に置かれることが多いと言われます。
オプションを売った銀行は、相場の動きで損をしないように、ドルの売り買いでヘッジ(損を打ち消す取引)をします。バリアに触れると権利が消える取引では、その手前で、値段をバリアに届かせないための売り買い(防戦売り・防戦買い)が出ることがあります。たとえば海外の相場ニュース(ForexLive・2022年9月8日)は、ドル円について「145.00の手前に、オプションのバリアに関係する防戦売りがある」と伝えていました。日本銀行のデータでは、この前後の東京時間の高値は9月7日144.38円、8日144.53円、14日144.95円で、145円を上回ったのは9月22日(高値145.90円)でした。145円の手前で止まっていた理由が何だったかは、このデータからは分かりません。
オプションの期限の時刻にも決まりがあります。金融安定理事会(FSB)の2014年の報告書は、ニューヨーク時間10時の通貨オプションの期限(日本時間の23時か0時)に取引が増えることを挙げています。
ただし、どの値段にどれだけのオプションがあるかは公表されていません。相場ニュースが伝えるバリアの位置は、市場関係者からの聞き取りです。
為替介入があった日の水準
150円や160円のような数字は、為替介入(政府・日本銀行による円買い・円売り)の「警戒ライン」として報じられることもあります。ただ、財務省が公表しているのは介入の日・金額・売買した通貨で、何円で介入したかは書かれていません。2022年以降の円買い介入の日と、その日の東京市場の高値を並べると次のとおりです。
| 介入の日 | 介入額(ドル売り・円買い) | その日の東京市場(9〜17時)の高値 |
|---|---|---|
| 2022年9月22日 | 2兆8,382億円 | 145.90円 |
| 2022年10月21日 | 5兆6,202億円 | 150.48円 |
| 2022年10月24日 | 7,296億円 | 149.71円 |
| 2024年4月29日 | 5兆9,185億円 | 東京市場は休み |
| 2024年5月1日 | 3兆8,700億円 | 157.99円 |
| 2024年7月11日 | 3兆1,678億円 | 161.76円 |
| 2024年7月12日 | 2兆3,670億円 | 159.45円 |
| 2026年4月30日 | 6兆2,787億円 | 160.72円 |
| 2026年5月4日・6日 | 7,802億円・4兆6,759億円 | 東京市場は休み |
| 2026年7月30日〜8月26日 | 合計15兆3,993億円 | 日付は11月9日に公表 |
※財務省「外国為替平衡操作の実施状況」、日本銀行「東京市場 ドル・円 スポット 最高値」。介入した時刻は公表されていないため、東京市場の高値が介入した時の値段とは限らない。
介入があった日の水準は145円台、150円前後、157〜161円台とばらばらで、決まった数字があるわけではありません。介入の実績と2026年の動きは、ニュース解説の記事にまとめています。
もっと詳しく為替介入は7〜9月に15兆3,993億円|11月9日公表の日次の内訳で何が分かるか
企業の為替予約は「いつ動くか」に関わる
輸出や輸入をする企業は、ドルを受け取る日・払う日が先に決まっています。その日の為替レートで損をしないよう、銀行とあらかじめレートを決めておく取引が為替予約(先物予約)です。中小企業基盤整備機構の解説は、為替予約を「将来の一定の期日または期間を、予約の実行日または期間と定めて、銀行と外貨の決済を行う為替レートをあらかじめ取り決めておく為替売買取引」と説明しています。一度予約すると、原則として取り消せません。
- 輸出企業:将来受け取るドルを円に換える予約をする(ドル売り)
- 輸入企業:将来支払うドルを手に入れる予約をする(ドル買い)
企業が計画の前提にしている為替レートは、日本銀行の短観で分かります。2026年9月調査では、輸出企業(大企業・製造業)の2026年度の想定為替レートは1ドル=153.79円でした(6月調査は151.49円)。この数字は150円のようなきりのいい数字ではなく、各社の答えの平均です。想定レートそのものが150円や145円を特別な数字にしているわけではありません。
為替予約や企業の売り買いが目立つのは、「どの値段で」より「どの日時に」です。
仲値(9時55分)と五十日
日本の銀行は、毎朝、その日に顧客と取引するときの基準のレート(公示相場の仲値)を決めます。東京では9時55分ごろの市場の値が基準です。Takatoshi Ito氏とMasahiro Yamada氏の研究(NBER Working Paper 22820・2016年)は、この仕組みを次のように説明しています。
- 市場関係者によると、仲値の前後は、輸入企業のドル買いが輸出企業のドル売りを上回ることが多く、ドルが円に対して上がりやすいことが知られている
- それは大きな支払いが集まる日、つまり5日・10日・15日・20日・25日・30日(五十日)と月末に、より目立つ
- 銀行間の取引データでは、仲値の時刻の急な値動きはロンドンの基準時刻より多く、月末・金曜日・五十日に特に多かった
- 2008年より前は、銀行が決めた仲値が、その時間帯の実際の取引の最も高い値より高い方向にずれていた。2008年以降も中央値より上にずれていた
ほかにも、五十日の朝にドル円が9時55分に向けて上がる傾向を「ゴトー日アノマリー」(理屈ははっきりしないが、よく見られる相場のくせ)と呼んで調べた研究があります(Bessho ほか・2023年)。いずれも「上がりやすい傾向」の分析で、毎回そうなるという話ではありません。当サイトは1日ごとの値(日足)のデータしか持っていないので、9時55分の前後の値動きは確かめていません。
海外に五十日はない
五十日は、日本の企業の支払いの慣行と、日本の銀行の仲値という、日本だけの仕組みから生まれたものです。効くのは主に東京時間のドル円で、海外の通貨どうしの取引に五十日はありません。
海外で「注文が集まる時刻」として知られているのは、ロンドン16時のフィキシング(その時刻の取引から、その日の基準の為替レートを決めること)です。ここで決まるWM/ロイター(WMR)の値を、世界中の運用会社が、株価指数や債券指数に組み込まれた通貨の値段の基準に使っています。金融安定理事会(FSB)の2014年の報告書は次のように書いています。
- ロンドン16時のWMRの値は、FXの基準の中で「圧倒的に主要なもの」
- 調べた7通貨すべてで、この時刻の1分あたりの取引量が1日で最も多く、多くの通貨でふだんの1分の平均の10倍以上
- この時刻の取引の膨らみは月末と四半期末に最も大きく、運用の組み替えが集まるためとみられる
WMRの値は、2015年2月15日から16時をはさむ5分間の取引で計算されるようになりました(それまでは1分間)。日本時間では、イギリスの夏時間のあいだは0時、それ以外は1時です。
ほかの研究(Krohn ほか・Journal of Finance・2024年)は、主要9通貨・21年分のデータで、ドルが基準時刻の前に上がり、後に下がる動きが、東京・ロンドンなど各地の基準時刻のまわりで繰り返し見られることを報告しています。理由は、基準時刻に出るドル買いの注文を銀行が受け止めるための売り買いと説明されています。

当サイトの集計:高値・安値は00銭・50銭ちょうどに多いか
注文が00・50に集まるなら、その日の高値や安値も00銭・50銭ちょうどになりやすいはずです。日本銀行が公表している東京市場(9〜17時)のドル円の高値・安値で確かめました。
- データ:日本銀行「東京市場 ドル・円 スポット」の9時・最高値・最安値・17時。4つとも値がある1999年1月4日〜2026年10月29日の6,817営業日(高値・安値あわせて13,634件)
- 数え方:値段の銭の下2桁(150.50円なら50)を数える。ばらばらなら、どの下2桁も約1%ずつになる
- 比べる相手:9時と17時の値。決まった時刻の値なので、止まった場所とは関係がない
結果は次のとおりです。
- 高値・安値は、5銭刻みの値(00、05、10……95)に偏っていた。5の倍数の下2桁は1つあたり平均180.5件、それ以外は平均125.3件
- ところが、00と50は、5銭刻みの値の中で特に多くはなかった。 00は183件、50は185件で、ほかの5銭刻みの値(平均180.1件)とほぼ同じ。100通りの下2桁の中で、00は10番目、50は9番目に多い数字だった
- 年ごとに見ると、5銭刻みへの偏りは1999年に特に大きく(高値・安値の47%。ばらばらなら20%)、データの記録の刻みが影響している可能性もある

※比べる相手にした9時・17時の値は、逆に5銭刻みが少なかった(5の倍数は平均121.0件、それ以外は140.2件)。このため「高値・安値の00・50の割合(2.70%)は9時・17時(1.33%)の2倍」という比べ方は差を大きく見せるので、結論には使っていません。集計の方法は、計算する前に決めて記録しています。
この集計で分かるのは、「東京時間の日々の高値・安値が、150.00円や150.50円ちょうどで止まった日が特に多い」とは言えない、ということです。オスラーの研究のとおり、ちょうどの数字には利益確定の注文が、少し先には損切りの注文が集まるので、値段は「ちょうど」より「少し手前」や「抜けた少し先」で止まることもあります。東京時間(9〜17時)だけの値段なので、海外の時間帯を含む1日の高値・安値とは違う点にも注意が要ります。
きりのいい数字を見るときの注意
- 「線」ではなく「帯」で見る。 150円が意識されるといっても、止まる場所は150.00円ちょうどとは限りません。手前の数銭〜数十銭と、抜けた先の数銭〜数十銭を含む幅で見るほうが実態に近くなります
- 止まる理由と抜けて走る理由は、同じ数字のまわりにある。 利益確定の売りが使い切られれば、その先の損切りの買いで勢いがつくこともあります。サポートラインやレジスタンスラインと同じ考え方です
- 日時の要因と重なると動きが大きくなりやすい。 五十日の仲値や月末のロンドン16時のように注文が集まる時刻と、きりのいい数字が重なる場面は、値動きが急になることがあります。急な値動きでは、注文した値段と約定する値段がずれることがあります
もっと詳しくサポートラインとレジスタンスラインの見方|水平線の引き方と「役割の入れ替わり」を図解
もっと詳しく三尊・トリプルトップ・逆三尊・トリプルボトムはなぜできる?|誰がどんな注文を出して形になるのかを図解
取引ツールで確かめる
FX会社の取引ツールの多くは、チャートに水平線を引いたり、1時間足や5分足に切り替えたりできます。150.00円のような数字に線を引いて、その前後で値段がどう動いたかを自分で見比べてみると、「ちょうど」より「帯」で動いていることが分かります。各社の取引ツールやコストは比較ページにまとめています。
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よくある質問
- Qドル円で150円になると必ず止まるのですか?
- A必ずではありません。150円のような数字の手前には利益確定の売り注文が集まりやすい一方、そのすぐ上には損切りの買い注文が集まりやすく、抜けると勢いがつくこともあります。当サイトが日本銀行のデータで集計した範囲では、東京時間の高値・安値が00銭・50銭ちょうどで止まった日が、ほかの5銭刻みの値より多いという偏りは見られませんでした。
- Q仲値と五十日とは何ですか?
- A仲値は、銀行がその日の顧客向けの為替レート(公示相場)の基準にする値で、東京では9時55分ごろの市場の値で決まります。五十日は5日・10日・15日・20日・25日・30日(と月末)のことで、日本の企業の支払いが集まりやすい日です。輸入企業のドル買いが多くなりやすく、研究ではこの日の仲値の前後に特徴的な値動きが報告されています。
- Q五十日は海外の通貨にもありますか?
- A五十日は日本の企業の支払いの慣行なので、海外にはありません。海外で注文が集まる時刻として知られるのは、ロンドン16時のWM/ロイターの値(日本時間の0時か1時)で、月末と四半期末に取引が特に増えると金融安定理事会(FSB)が報告しています。
出典
- C. L. Osler「Currency Orders and Exchange-Rate Dynamics: Explaining the Success of Technical Analysis」ニューヨーク連銀 Staff Report 125(2001年3月。大手銀行の注文 9,667件・1999年9月1日〜2000年4月11日・うちドル円43%/00で終わる値に平均約8.7%/利益確定の9.3%・損切りの4.4%が00ちょうど)(2026年11月2日確認)
- C. L. Osler「Currency Orders and Exchange Rate Dynamics: An Explanation for the Predictive Success of Technical Analysis」Journal of Finance 58(5), 2003年, pp.1791-1819(上の Staff Report の学術誌版)(2026年11月2日確認)
- C. L. Osler「Support for Resistance: Technical Analysis and Intraday Exchange Rates」ニューヨーク連銀 Economic Policy Review 6(2), 2000年7月(2026年11月2日確認)
- T. Ito and M. Yamada「Puzzles in the Forex Tokyo “Fixing”: Order Imbalances and Biased Pricing by Banks」NBER Working Paper 22820(2016年11月)(2026年11月2日確認)
- H. Bessho, T. Sugimoto, T. Suzuki「Forex Trading Strategy That Might Be Executed Due to the Popularity of Gotobi Anomaly」arXiv:2301.13204(2023年1月)(2026年11月2日確認)
- I. Krohn, P. Mueller, P. Whelan「Foreign Exchange Fixings and Returns around the Clock」Journal of Finance 79(1), 2024年, pp.541-578(2026年11月2日確認)
- 金融安定理事会(FSB)「Foreign Exchange Benchmarks Final Report」(2014年9月30日。ロンドン16時のWMRの値で1分あたりの取引量が1日で最大・月末と四半期末に大きい/東京9時55分・ニューヨーク10時のオプション期限でも取引が増える)(2026年11月2日確認)
- BIS掲載 Guy Debelle(オーストラリア準備銀行)講演「FX benchmarks」(2015年2月。WMの計算時間を1分から5分へ広げる・2015年2月15日から)(2026年11月2日確認)
- 日本銀行「第210回 全国企業短期経済観測調査(短観)2026年9月調査」(2026年10月1日。輸出企業の想定為替レート 大企業・製造業 2026年度 153.79円)(2026年11月2日確認)
- 中小企業基盤整備機構 J-Net21「為替予約(先物予約)とは」(2026年11月2日確認)
- 七十七銀行「為替予約」(輸入予約・輸出予約)(2026年11月2日確認)
- 財務省 過去の介入実績 全データ(CSV・平成3年4月〜令和8年6月期)(2026年11月2日確認)
- 財務省 外国為替平衡操作の実施状況(令和8年7月30日〜8月26日)(2026年11月2日確認)
- 日本銀行 時系列統計データ API「東京市場 ドル・円 スポット」9時・最高値・最安値・17時(FM08 / FXERD01〜04)1999年1月〜2026年10月(2026年11月2日確認)
- ForexLive(Eamonn Sheridan)「Knock out options 145 in USD/JPY - defensive sellers ahead the level」(2022年9月8日)(2026年11月2日確認)
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